ストリート婚活1: ラインをゲットしたい
某日昼
本当に久しぶりに昼から街に立った。
とりあえず今日の目標は、良いなと思えた女性からラインをゲットすること。
ただ正直に言えば、
この目標は街に立った時から既に諦めていた。
声をかけること。
特に久しぶりだと、これを実行すること自体難しいということは何度も経験してきた。
うまくいった経験の詳細はうまく思い出せないけれど、うまくいかなかった経験は残念ながら細かく覚えている。その時の心情を含めて。
だからこそ、ラインを交換するなんて少し諦め気味で。
でも休日の昼間からこんな場所に立っている。
ここに来る前の自分の強気な気持ちを無駄にするわけにいかない。
こんなことに時間を使わなければ研究も進めることができたのだ。
無理だったら、帰って論文の続きを書こう。
なんとか、ほんの少しでも自分の納得する形で終わりたい。
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イヤホンしてるし。
まあ今は周りに人が多いしな。
多分待ち合わせだろうね。
歩くの早いなぁ急いでいるんだろう。声かけても無理だろう。
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街に着いてから何度もチャンスを逃す中で、1人の女性とすれ違った。
童顔だけれど、すごく綺麗な感じ。
年下だろうか、どうしよう。
いや、そりゃあ未成年はNGだけど流石に違うよな。
これは電車の改札に向かってるのか。
....どうするか。どうしよう。
ハジキトバセ
自分の弱い思考を全部、弾き飛ばせ。
弱い思考が頭を支配する。
やりたくないことを目の前にしたときに、人はすぐに言い訳の達人になる。
特に自分はそうだ。
全部吹き飛ばさないと声なんてかけられない。
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自分はもう大人だ。高校生ではない。所属しているコミュニティーは少し特殊だからじっとしていても出会いなんてない。
なんなら一度も女性と会話をせずに1年を終えることだって可能だろう。
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勇気が出ない。
こういう時はどうするか。
自分は知っている。
根性論。
声をかけるしかない。
追い越すしかない。
半歩ほど追い越して顔を覗く。目が合う。
ああ綺麗な人だ。
どうせ既に良い相手がいるのだろう。
弱い考えが頭に浮かぶ。
でももう目があってしまった。
やるしかない。
あの!
すごく綺麗な方だなと思って!
目をそらされた。そりゃそうだ。
これだけ声が上ずって余裕のない感じが見え見えの男なんて相手にしたくない。
もし逆の立場だったら自分でもそうするだろう。
最悪な入りをしてしまった、意味もなく怖がらせてしまった。
だけどもう走り出してしまっている。
いやー本当に勇気出して声をかけてみたんだよね。
しかもこれ周りから見たら俺って今独りごとずっと言ってる状態だし。
俺かわいそすぎちゃう?
我ながら酷すぎる声かけだ。エセエセ関西弁まで出してしまった。
けれども
彼女が一度こっちを見てくれる。目が合う。
ああ、なんて優しい方なのだろうか。
あ、やっと気付いてくれた!
聞こえてなかったかもしれないからもう一回言うね!
髪型すごいおしゃれで声かけたんだよね!
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本心ではあったけれど、少しユーモアっぽいことを入れてみたかったのが本音。
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ふふ、そうなんですよ。さっき美容院でやってもらったんですよ。
運が良いと思った。ツいている。
そこから怒涛のトーク。
どれだけ自分が本気か。
結構緊張したこと。いやだいぶ。
真面目だけども、つまらなくならないように。
素直に。綺麗だと思ったこと。これを逃したらもったいないということ。
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いいですよ。私もお酒好きですよ。
飲み仲間欲しいですしね。
今度飲みに行こうという自分の打診が通った。
相手もお酒を飲むのが好きらしい。
やはり蓋を開けてみないと何もわからない。
久しぶりに実感した瞬間だった。
お互いにラインを開くように促す。
自分のラインQRを差し出す。
向こうも自身のラインを開いて、QRを読み取ろうして
こう言った
だけどさ、